工芸ゼミ所属、水田梓園さんの作品紹介です。
『黒泥土属人器/父』
陶土
Φ186×H42、Φ113×H38、Φ117×H63、Φ129×H44、Φ118×H60(mm)
属人器は,家族内の例えば父母子,各々の専用の食器や食具のことを言います。また食具とは,箸やスプーン,フォークなど手で持って用いる道具のことです。属人器の存在を知ってからこの文化に興味を持ち,現代の基本的な家族構成である父母子の器を作ろうと思いました。作品「黒泥土属人器/父」作品「赤土属人器/母」は実際に私の父母のイメージで制作しました。父の器は,父へ対するイメージであるモノトーンになるよう,黒泥土をベースにぽってりとした卯の斑釉を使用しました。格好よく決めつつも,柔らかな優しさを兼ね備えた器を目指しています。透明釉の上に卯の斑釉を掛け焼成を終えましたが,少し灰色に寄った黒すぎない器と明るい白のコントラストがとても綺麗に仕上がりました。卯の斑釉の境界線や薄く掛かっている部分に青や赤の部分が生まれたのが良い味わいになったと思います。
『赤土属人器/母』
陶土
Φ148×H41、Φ106×H44、Φ118×H69、Φ122×H53、Φ115×H64(mm)
母の器は信楽の赤土に白化粧の粉引を施したものです。何も施していない赤土に釉薬のみ,あるいは釉薬の下に絵付けを施していたとしても,古臭い印象になってしまうと思い,白化粧の粉引を選びました。白化粧の持つ味わい深い優しさは,どんな人にも親切を行える母によく似合っていると思えたためです。実際に透明釉を掛け焼成してみると,釉薬の掛かった赤土の発色が意外に可愛らしく,私としては,白化粧土をしっかり掛けたものより薄掛けしたものが,砂糖の掛かったかりんとうのように見えて好みです。
『もぐさ土属人器/子』
陶土
Φ154×H27、Φ97×H45、Φ110×H44、Φ129×H70、Φ128×H70(mm)
子の器のみ,あまり具体的なイメージは持たず制作しました。私よりも少し若い,まだ親元で暮らしている中高生あたりのイメージで,私自身から着想を得た器ではありません。人工的な発色の釉薬では陶器にはそぐわず,また落ち着いた発色の釉薬を使用するとしても子供らしさが消えてしまうために悩みましたが,候補はひわ色釉と空色釉の2種に絞りました。最初はひわ色釉で試しましたが,焼成後の色が人工的に感じられ,思い描いていた柔らかな色味にはならず,もぐさ土独特の少し荒い地肌も見えなくなってしまったのでひわ色釉は断念しました。次に空色釉を試すと,もぐさ土の削った表面も綺麗に見え,また色味も暖かく思い描いていた雰囲気に合致したため,空色釉を使用することにしました。もぐさ土の持つ軽く柔らかい生成り色と空色釉の重なりは春の自然色のような雰囲気で,大変可愛らしく仕上がったと思っています。
『赤土共用器』
陶土
Φ244×H50(mm)
この共用器というのは,属人器と違って誰のものでもない器で,今回はおかずを盛り付ける器を制作しました。父母子3人でおかずを囲んで食事しているイメージで展示を工夫しました。
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