《 蛍手金魚文鉢 》
φ197×H115㎜
磁器土
現代の蛍手作品に、円の周りにいくつも孔が開いているためにその円が浮いているように見える作品がある。それをヒントに、幾何学模様ではなく具象的なモチーフを浮かせようと試みた。
今回は、実際に水の中に浮いて生きる金魚をモチーフとして選び、周りに孔を開けていった。孔はできる限り間隔を狭くして配置し、浮遊感を演出した。また、水紋をモチーフに孔を配置し、金魚が水の中を揺蕩う様子をより直感的にイメージしやすくなるよう狙った。
《 蛍手鉢「七宝繋」》
φ200×H105㎜
磁器土
蛍手の孔は、意味を持たず意匠的に開けられることが多いように感じる。それに意味を持たせたいと考えて制作した。
「家庭円満」「繁栄」の意味を持つ七宝文は、江戸時代の仁清の作品にも見られており、透かし彫りでも前例の多い文様である。これまでの作例では七宝文の紡錘形の部分を透かし孔にすることが多いようだったが、本作品ではそこ以外の四角部分も切り抜き、前例とは違う表現を試みた。
《 蛍手壺「波間に菱」》
φ148×H100㎜
磁器土
昨年の制作展で出品した作品を参考に、波の形を規則的に改めた模様を使用した。さらに、波と波の間の空間に2種類の似た模様を交互に入れることでリズムを生み出した。
口元が窄まった形状のため光を内側に取り込めず、普通に置いていても光を通す様子がなかなか見えづらいが、その分ランプシェードとしても生かすことができる。
《 蛍手花器「菱一列」》
φ85×H185㎜
磁器土
口縁部を一周する透かし孔は、昨年6月に行われた制作展に出品した作品にも用いていた。本作では透かし孔同士の隙間を狭め、より繊細な表現を目指した。
孔の形を四角にすると、孔と孔の隙間をより狭くすることができるため、このような形の孔を開けた。その隙間にも孔を開けることで孔を敷詰め、さらに繊細さが増すようにした。
器の形は、孔が光を透かす様子が外から見えるように、口縁部を外側に反らすことを意識した。
《 蛍手透彫花器「垂飾」》
φ121×H137㎜
磁器土
形は、蛍手の孔が上からの光を受けやすいように口元を広げ、すぐ倒れることが無いように下側は末広がりに、と考えて作った。そうしてできたくびれが目立つ形の器にアクセサリーのような模様を施して、抽象的に「着飾る女性」を表せないかと考えた。
模様は、私の好きなアーティストであるアルフォンス・ミュシャの《黄道十二宮》の首飾りに着想を得た。揺れるアクセサリーのような模様でさらに女性らしさを強調した。
《 透彫蓮根壺 》
φ163×H140㎜
磁器土
卒業論文の中で、透かし彫り作品の孔は時代が進むにつれて具象的な形を持つ傾向があることが分かった。そこで、孔が具象物を示すのではなく孔が具象物を構成するというコンセプトで、この作品を制作した。
もともと、蓮根の不規則で自然的な孔の様子を作品にしたいと思っていたので、モチーフは蓮根とした。器全体で蓮根のように見せるため、器の形も横から見た時に丸になることを意識して成形した。
《 蛍手組茶碗「波斑紋」》
φ120×H56㎜・φ115×H58㎜・φ113×H55㎜・φ95×H50㎜・φ90×H46㎜
磁器土
家族で使えるような、サイズ違いの組茶碗を制作した。大きさが少しずつ違うので、重ねて収納することが可能となっている。
文様は、元は「家族やパートナーと困難を乗り越える」という意味を持つ「波千鳥」を用いる予定だった。しかし、波を超えるものを「千鳥」に限定しないことで、どのような家族にもしっくりくる絵柄になるのではないかと考え、名前を「波斑紋」と改めた。
Comments